映像体験で感じる不思議は魔法
「この伝令を伝えなければ、千人以上の兵士たちの命が危機にさらされる。その中には君の兄も含まれている。だから君は何としてもこの伝令を届けなければならない」
「1917」は、上官からそう言われた二人の兵士が前線にいる部隊に伝令を伝えにいく話だ。とても単純な構造の物語ではあるのだけれど、そこで味わう戦争の恐怖は映画ならではといえる。その恐るべき現場を、主人公たちと一緒に目撃するのがこの映画の醍醐味だ。
映画館の大画面でみていると、主人公と一緒にリアルタイムでその体験をしているように感じてくる。ワンショット風に撮影されていることもあり、臨場感が効果的に演出されているからだろう。
映画を観終わった後に、冷静になって振り返ってみると、一体どうやって撮影したんだろう、という疑問が浮かぶ。ネットで検索すると、youtubeなどでその撮影方法が紹介されている。舞台裏を知ると、かなり緻密に設計されていることが分かり、さらに映画のおもしろさが増す。
映画をみているときに感じる「不思議」は「魔法」であり、私たちの興味を掻き立てる。そのような映像体験を「魔法」と表現していたのは、落合陽一さんだった。
映画が魅力的であり続けているのは、そうした「魔法」がまだ存在しているからなのだ。