木曜日20時、不定期更新。 小説、映画について書きます。 推理小説中心です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

『リプリー』、英語タイトルの方が的確。天才リプリーの姿を描く犯罪小説

リプリー (河出文庫) 作者:パトリシア ハイスミス メディア: 文庫 1955年、パトリシア・ハイスミス著。殺人を犯した主人公、トム・リプリーが、警察機関の捜査から見事に逃げ切っていく姿を描く、犯罪小説。 おもしろかったポイントは3つ。 (1)原題の方…

『幻の女』、なんでそんなに人気があるの?

幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:ウイリアム アイリッシュ 発売日: 2016/06/30 メディア: Kindle版 1964年、舞台はニューヨーク。ある男が妻を殺害した容疑で逮捕されてしまう。彼は無罪を主張するが、すべての証拠が、彼が犯人であることを…

『新感染』、ゾンビ映画、定番ハズレなしのエンターテインメント作品

新感染 ファイナル・エクスプレス(字幕版) 発売日: 2018/01/01 メディア: Prime Video ゾンビ映画。都市でゾンビ・ウイルスがばら撒かれたら……というパニック映画。父と娘、夫と妊婦、高校生のカップルなど、様々な人たちが生きるために必死に逃げる。 おも…

『女には向かない職業』、キャリア一年目の新人を応援したくなる

女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:P.D.ジェイムズ 発売日: 1987/09/01 メディア: 文庫 探偵小説。1972年。主な舞台はイギリス、ケンブリッジ。ロンドンとケンブリッジを行き来する。位置関係はこんな感じ。 主人公はコーデリア・グレイ、22…

『やし酒飲み』、構造はシンプル。あの世に行って帰ってくる話

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8) 作者:イサク・ディネセン,エイモス・チュツオーラ 発売日: 2008/06/11 メディア: 単行本 『やし酒飲み』、アフリカ文学。1946年。支離滅裂な話なのかと思っていたのだけれど、かなりしっか…

『ゲームの王国』、「歴史」・「SF」・「認知の歪み」、いろんな要素のごった煮が楽しい!

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA) 作者:小川 哲 発売日: 2019/12/04 メディア: Kindle版 SF小説。上巻は1956年から1978年、ポル・ポト政権下のカンボジアが舞台。「平等な社会を実現する!」、そんな理想に挑んだ人間たちが生み出したのは、この世の地獄だ…

『サマータイム・ブルース』、女探偵の奮闘。ならずものと戦うアクションもあるよ

サマータイム・ブルース〔新版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:サラ・パレツキー 発売日: 2010/08/10 メディア: 文庫 探偵小説。1982年の作品。生活感にあふれ、生き生きとした描写が楽しい。 『血の収穫』『マルタの鷹』などと同じく私立探偵ものだが、読…

『マルタの鷹』、本心を見せないタフな男が、たった一度だけ気持ちを吐露するのが最高

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:ダシール ハメット 発売日: 2012/09/07 メディア: 文庫 前回に続き、ダシール・ハメットのハードボイルド小説。1930年の小説。『血の収穫』とほぼ同時期の作品。探偵、サミュエル・スペードと、鷹を…

『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』、主人公の碇シンジくんは、テレビと映画では異なる問題を抱えているみたい

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 発売日: 2012/11/17 メディア: Prime Video もうすぐ第四作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されるので、あらためて前作の『Q』を観た。2012年公開。時事ドットコムで2012年の出来事を調べると、習近平が国家主席になり…

『血の収穫』、ハードボイルド小説はここから始まる

血の収穫【新訳版】 (創元推理文庫) 作者:ダシール・ハメット 発売日: 2019/05/31 メディア: 文庫 ハードボイルド小説の代表作を読んでみようと思い、『血の収穫』を手にとった。ハードボイルド小説、黎明期の作品。出版は1929年。世界恐慌が起きた年。昭和…