自分の出自と向き合う
スター・ウォーズが完結した。世界中にたくさんのファンがいて、1977年にアメリカで公開されてから、何十年も愛され続けている、ものすごい力を持ったシリーズだ。完結編であるエピソード9も、誰でも楽しめるエンターテインメント作品だった。
観終わってレイのことをぼんやりと考えていたら、その行動がある映画の主人公とほとんど同じだということに気がついた。「アナ雪2」のエルサだ。
物語の骨格は以下の通り。主人公Aとその仲間たちBの関係を考える。Aは特別な力を持っている唯一の存在。Bたちは勇敢な普通の人たちだ。
(1)主人公Aはすごい力を持っている。その力はどこからやってきたものなのだろう。主人公は自分の出自に悩む。
(2)外から敵がやってきて、自分の住んでいる場所が危険にさらされる。放置すれば自分の住んでいる街や愛するものを失うかもしれない。
(3)Aは問題を解決すべく、ひとり冒険に出ようとする。すると仲間Bたちが一緒にいくという。Aをひとりにするなんてできない。心配だ。Aは一応納得。
(4)AとBたちの大冒険。
(5)AはBたちを置き去りにして、先へ進んでしまう。Aにはすごい力がある。Bたちにはたどり着けない場所へ行ってしまう。
(6)Bたちは置き去りにされたと感じるが、AにはAの考えがあるのだろう、自分たちのやるべきことをやろう、と思う。
(7)それぞれの冒険。Aは自分の出自と向き合う。Bたちは敵と戦い、社会と向き合う。
(8)問題の解決。AとBたち、それぞれの勇気ある行動のおかげで、再び世界は平和になった。どちらが欠けても解決しなかった。そしてその冒険を通じて、Aは成長し、自分が何者であるかをはっきりと宣言する。
演出的な表現に差はあるけれど、主人公の心情、動きはかなり似ている。すごい力を持つ主人公は「家族」や「出自」といった個人的な問題と向き合う。一方の力を持たない普通の仲間たちは「自由」や「社会」と向き合う構造になっている。私たちと同じ立場である。
主人公は助けたいという仲間たちの存在を大切に思っているが、どこか疎ましく思ってもいる。途中で我慢ができなくなり、その力を全開放してものすごく遠くまで行ってしまって、そこで孤独を深めたりする。そこで主人公の問題意識はどんどん内面化する。その問題を解決するために再び立ち上がり、冒険を続ける。その先で主人公は真実を手に入れる。
主人公の未来は出自や血によって決まるのではない。その意志と行動によって切り拓かれるのだ。