異能力を描く
漫画や小説でおなじみの、特別な力を持った人々の姿が描かれる。
少年漫画ならその能力をバトルに生かし、敵を粉砕するところだが、本書の中の能力者たちは人間の中に潜み、その力を隠しながら生活している。その力がなぜ発生したのかは分からない。どうやら常野という土地に根ざした力のようである。
能力と血や土地との関連性を強く連想させるところ、そして、その能力は人の意志で操ることのできるものではない、運命のように受け入れていくものだ、という立場が本書の特徴だと感じた。
異質な力をもつ人たちは、多くの場合、一般的な人から疎んじられ、虐げられたりする。そんな困難な状況にあって、いかなる問題を解決するか、どんな敵と対決するかが能力ものの見どころの一つだ。「光の帝国」で描かれる能力は地味で小さなものばかりかというと、そうでもない。結構、ド派手なことが起きる。殺人も起きるし、時が巻き戻ることもある。力をもつ善良な人たちと、力を持たない悪人たちの間で摩擦が起きたり、自分の身に降りかかる不幸をその力で払おうとしたり、未来に起きる出来事を先に見てしまったりする。
少年漫画向けにするなら、お互いに力を持ち、譲れないものがあり、その力を行使しなければならない状態に追い込まれるだろう。そうした状況設定の違いを考えてみるのも、別の味わいがあって楽しい。