失われた過去を、未来へとつなぐ
三本の物語が語られていく。一つは、「三人の農夫」の写真を見た男の話、もう一つは第一次大戦中の農夫たちの運命、もう一つは技術に関する雑誌記者の話だ。
別々の三本の話が語られていくのは、アメリカのテレビドラマのような構造をしているな、と感じた。(パワーズのこの小説が出版されたのは1985年だが)時代も背景も異なるその話がどのように結び合わさっていくのかが気になって、読み進めていった。
しかし、その結節点にフォードや夢が関係してくるとは思わなかった。失われた過去は、現在の私によって解釈され、未来へのメッセージへと変えられる。その過程を経て、過去は再び輝きを取り戻す。その主題を描くための、独特の物語の紡ぎ方だ。