木曜日20時、不定期更新。 小説、映画について書きます。 推理小説中心です。

結末を想像する

 

 ドストエフスキーの小説には「笑い」の要素があると感じていたが、そのことを再確認させてもらった。ゾシマ神父と一緒に一家が集まるシーンは暴力と狂気の笑いが渦巻いているし、ミーチャがグルーシェニカの愛を取り戻そうとのたうちまわる様子は、この本の中で「スケルツォ」と評されている通り、滑稽ですらある。

 

本書は小説の中で描かれる分かりにくいシーンを、こういうことだよ、と順を追って丁寧に解説してくれている。さらには表までついていて、出来事が整理されているので、ミステリーとして読む時、情報整理にも役に立つ。

 

いまだに「カラマーゾフの兄弟」は研究され、学会が開かれているのだそうだ。まだ読み解きができるということは、多元的な読みが可能であると同時に、正解がないともいえる。何しろ、小説冒頭で予告される「第二部」は書かれることなく終わっているのだから。存在しない小説がなければ、答えは出ない。そこにはサモトラケのニケのように、想像力がいくらでも入り込む余地がある。